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【連載】運営委員リレーエッセイ 第12回「地域とともに看取りを考える」

  研究所うんなんは、総勢22名のさまざまなご専門を持つ運営委員の皆様によって支えられています。

 このたび運営委員の皆様にエッセイを執筆していただくことになりました。テーマは「当研究所との関わりやご専門の立場から市民の皆さんに伝えたいことなど」です。


 第12回目は社会福祉法人よしだ福祉会理事長 藤原伸二氏によりご執筆いただきました。


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「地域とともに看取りを考える」 

藤原伸二

社会福祉法人よしだ福祉会理事長


 ケアは、その支援に根拠をもっていなくてはいけません。根拠(エビデンス)なく日々の介護を行うのは単なる「お世話」にすぎません。


 一般企業で働く場合PDCAサイクルが基本となります。福祉の業界で支援を行う場合も同様で、先ずは計画を立て、それに基づいて支援を行わなければなりません。この計画を立てるにあたっては本人、家族とともに、これからどう暮らしていきたいのか、あくまで本人の意向を軸に人権意識を高く持って目標を立て、課題を明らかにしていきます。この段階を経たうえで作成された計画が根拠のある計画になっていきます。


 私たちは日々の介護だけでなく、本人の希望を何か一つでも叶えていけるよう「ひとり1ケア」を方針に掲げています。生活のなかでの想いや希望はひとり一人みんな違います。それを半年から1年に1回、担当職員、家族とともに個別に支援するというものです。もう駄目だと思っていたけど最後にこれができてよかった、ここにもう一度来れてよかった、夢がかなった、「ありがとう」。ここで伝えられる「ありがとう」は、日々の介護で「(すまないねえ)ありがとう」と言われるのとは違い、職員からすると小さくても達成感を伴います。この達成感は人を育てていきます。


 法人で行っている初任者研修、実務者研修などの介護福祉士国家試験チャレンジ、そしてマネジメント研修を経て専門性を高め、真摯に利用者と向き合い、職員が本人と一緒にその願いを叶える。これら一連の体験は福祉人材を育てていくとともに人権や尊厳をないがしろにしない人材育成につながります。そして、この活動に参加した家族や友人にとっても、「私たちもこれを一緒にできてよかった」という思いが残り、これは死別した後に大きく残る「後悔」を減らしていくことにもつながります。


 人生の最期をどう迎えるかということは、「最期をどう過ごすか」と、「それまでを心置きなく自分らしくどう生きるか」に係わってきます。最近は終末期になると病院や施設に「お任せします」といった流れが多くなっていますが、最終の旅立ちは他人である職員が見送るものでなく、家族や最後に傍に居てほしい人も一緒に見送るべきものです。私たちは、家族や友人、地域の人や一緒に暮らしてきた仲間、医師や看護師、介護のスタッフと共に、心置きなく幕を下ろせる、そんな支援を行いたいと考えております。

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