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【連載】運営委員リレーエッセイ 第11回「ロコトレで転倒予防」

  研究所うんなんは、総勢22名のさまざまなご専門を持つ運営委員の皆様によって支えられています。

 このたび運営委員の皆様にエッセイを執筆していただくことになりました。テーマは「当研究所との関わりやご専門の立場から市民の皆さんに伝えたいことなど」です。


 第11回目は雲南市立病院 副院長(整形外科) 岩佐潤二氏によりご執筆いただきました。


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「ロコトレで転倒予防」 

岩佐潤二

雲南市立病院 副院長(整形外科)


 2020年4月から雲南市立病院整形外科に勤務しております。日常診療では特に高齢者で、骨粗鬆症に関連した転倒による背骨の圧迫骨折や股関節(大腿骨近位部)の骨折、手首(橈骨遠位端)の骨折が増加の一途をたどっています。2025年の冬は、特に日本海側地域を中心に記録的な大雪の影響もあり、雪かきなどをきっかけとした転倒による骨折が非常に多いようです。

 転倒、骨折などにより骨・関節・筋肉・神経などの運動器が故障して、立ったり歩いたりするための身体能力が低下した状態をロコモティブシンドロームといい、要支援、要介護の原因のトップに位置しています。日本整形外科学会では、ロコモティブシンドロームの予防として、毎日のロコモーショントレーニング(ロコトレ)をお勧めしています。ロコトレはたった2つの運動「片脚立ち」と「スクワット」です。片脚立ちはバランス能力をつけることに役立ち、1分間片脚立ち運動を左右とも1分間で1セット、1日3セット勧められています。スクワットは下肢筋力をつけることに役立ちます。足を肩幅に広げて立ち、お尻を後ろに引くように2-3秒間かけてゆっくりと膝を90度曲げ、ゆっくりと元に戻ります。5-6回で1セット、1日3セット勧められています。

 これらバランス能力と下肢筋力を毎日鍛えることの重要性は、老若男女問わず全ての人にあてはまります。私自身、2007年にノルウェーのオスロースポーツ外傷研究センターに1年間留学し、女子プロハンドボールチーム選手を対象に、膝の前十字靭帯損傷という、スポーツ選手にとっては致命傷となる外傷をいかに予防するかという研究に参加しました。ノルウェーではハンドボールが国技であり、男女共に世界ランキング上位に位置しています。女子プロハンドボールチームでは片脚立ちでスクワットしたり、選手同士が片脚立ちで互いに押し合ったりしながらバランスを保つトレーニングを取り入れて、膝靭帯損傷予防に有効であったことが報告されています。

 ロコトレはご自身にあった安全な方法で無理せず、1日1セットでも続けることが大事です。私自身も1日2回朝と夜、歯磨きをしながら1分間片脚立ちでスクワット運動を続けています。ぜひ皆様も日頃の生活にロコトレを取り入れて頂き、転倒、骨折の予防に、ひいては健康寿命の延伸につながればと切に願っています。

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