top of page

【連載】運営委員リレーエッセイ 第10回「雲南で生まれて」

  研究所うんなんは、総勢22名のさまざまなご専門を持つ運営委員の皆様によって支えられています。

 このたび運営委員の皆様にエッセイを執筆していただくことになりました。テーマは「当研究所との関わりやご専門の立場から市民の皆さんに伝えたいことなど」です。


 第10回目は雲南医師会 永瀬英雄氏によりご執筆いただきました。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「雲南に生まれて」 

永瀬英雄

雲南医師会


 出雲の地は古事記に示されるように古代ではおそらく一大先進地であり、たたら製鉄器に限らず大国主命の神話にあるように、医療の面でも先端の土地であったと思われます。しかし明治維新後、政治経済の中心が京都・大阪から東京に移り、維新後百数十年後には人口減少で放置すれば消滅する地域が生じると指摘される事態となっています。医療の世界でも近年特にそのような事態が目立ち、医療機関の倒産・廃業が過去最大と報告され、世界に誇れる国民皆保険事業の維持が困難となりつつある状態となっています。周りを見ても開業医師は高齢化し後継者のない医院も少なくありません。市立病院を中核として何とか地域医療を守らねばなりませんが、介護の面でも人手、人材不足が目立っており人口が増えないと解決できそうにありません。年をとることは仕方のないことですがそれぞれが少しでも長く元気で健康な体を保ち、体力を維持し足腰を鍛え他人様の世話にならずとも日常生活の出来る自立した健康老人を目指したいものです。ほぼ毎月、血圧などで受診される103歳のおばあさんがおります。腰が曲り難聴ですが足取りはしっかりとしよく語られ付き添いの息子さんも手間いらずだとおっしゃいます。このような超高齢の元気老人にはほとんどに暖かく見守りされる方が付いています。暖かい思いやりの世界が広がれば精神的にも肉体的にも健康な社会が出来るのではと思います。昔、自家用車などなかった頃は何処に出かけるにもバスか汽車でした。車中では見知った方々でがやがやと賑やかでした。誰もそれほど裕福ではなかったけれど皆仲がよくて懐かしい思い出の場面です。

一方で幸運な事もあります。地域医療を支えようと新しい空気が生まれ育ってきています。市立病院を例にとると若い先生を中心に研修医たちが多数集まって地域ケア科という新しい概念のもとに地域の内科・外科を問わず全ての医療に向き合おうというグループが活躍しています。私など年老いていく医療人には嬉しい限りです。一昨年喜寿を迎え暦年令は相当の年寄りとなりましたがまだ体力は残っており、記銘力の衰えは自覚するものの判断力はまだ何とか医療に役立ちそうです。身体教育医学研究所の一老門下生として今少しの間でも生まれ育ったこの地のために頑張ってみたいと思うこの頃です。

Commentaires


Les commentaires ont été désactivés.
bottom of page