研究所うんなんは、総勢22名のさまざまなご専門を持つ運営委員の皆様によって支えられています。
このたび運営委員の皆様にエッセイを執筆していただくことになりました。テーマは「当研究所との関わりやご専門の立場から市民の皆さんに伝えたいことなど」です。
第4回目は東京農業大学教授 上岡洋晴氏によりご執筆いただきました。
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「語り合う参加型での予防対策は有効です!」
上岡洋晴
東京農業大学教授
雲南市民の皆様、こんにちは。現在、私は大学に勤務していますが、その前は1999-2005年まで長野県東御市(旧:北御牧村)の身体教育医学研究所で働いていました。その前の1995年頃から武藤芳照先生の門下生として、旧吉田村での膝・腰痛の疫学的調査や、高齢者の皆様の運動指導(シルバー大学)などで延べ100日間くらい雲南市に滞在させていただきました。
六町村合併を議論していた際、吉田村から重点施策として提案されたのが「身体教育医学研究所うんなん」の設置構想でしたが、その先行事例ということで、私が当時務めていた東御市の研究所の活動状況について、合併協議会事務局(確か、木次のA・COOP 2F)を訪れてご説明をした思い出があります。このようなご縁もあり、雲南市は私の第二の故郷だと勝手ながら考えています。
1つだけ最近の研究の話をさせていただきます。農業従事者における膝や腰などの慢性的な関節疾患において、医学的治療(手術、薬剤、電気・超音波などの医療機器)以外での方法で、痛みを和らげるのに有効だった手法を世界中の研究から調べました。人を対象とした研究で最も真実を示す可能性が高いとされるランダム化比較試験による研究だけを集めて内容を精査しました。
その結果、まず正確に実施する筋トレは有効でした。加えて効果があったのは「参加型での人間工学的アプローチ」でした。これは、医師や有識者からの講演・講話などの一方通行型ではなく、痛みを軽減するための姿勢や動作などを参加者も一緒に考え、知恵を出し合って現実的な対策を見つけ出すというものです。こうした参加型・双方向型が効果的だということがわかりました。
この理由として考えられるのは次の3つです。「1.参加した皆さんが自身の苦しみや痛み、悲しみなどを吐露することによって参加者全員がそれを共有・共感できて、自助共助の機運がより高まること」、「2.自身で工夫していることなどを語り合うことで対策に関する新たな気づきが生まれること」、「3.冒頭の有識者の講話に関しての理解が深まり、自身でできそうな行動をとってみようという態度、すなわち行動変容に繋がること」です。
身体教育医学研究所うんなんの教育・実践活動では、こうした住民参加型での取り組みが多く、まさしく理にかなっているといえます。住民の皆様、おひとりおひとりが主人公であり主体ですので、こうした取り組みにはどんどん参加されて、ぜひ自分オリジナルの健康づくりを進められてください。
コンビネーション(参加型・双方向型)

【出典】
Kamioka, et al. Effect of non-surgical interventions on pain relief and symptom improvement in farmers with diseases of the musculoskeletal system or connective tissue: an exploratory systematic review based on randomized controlled trials. J Rural Med 2022;17:1-13.
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