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【連載】しまねの国保連載第57回 ​つながりと身体活動編「コロナ禍の活動自粛とフレイル」

 みなさんこんにちは。雲南市の北湯口です。

 過去9年分の9月号の書き出しを振り返ったところ、昨今は異常気象に関する記述が多く、ここ数年は「猛暑」「豪雨災害」が頻出でした。今夏も全国各地で猛暑と豪雨に見舞われ、災害級の気象が平年化しつつあることに心配が募ります。また、多くの活動が再開される一方、アウトドア活動中の大変痛ましい事故が続いたことに心を痛めた方も多かったと思います。この9月は防災月間です。防災の基本は減災(被害の最小化)であり、自助・共助・公助(自分の身を守る・地域で助け合う・公的に救助援助を受ける)の理解と組み合わせによる実践が大切と言われます。いつどこで起きるかわからない災害や事故から身を

守るためにも、“減災体質“が自然に身につくような生活を日頃心掛けたいものです。

 さて、今回は、コロナ禍での活動自粛によるつながりの変化や身体活動への影響について紹介していきます。

 それではよろしくお願いいたします!


コロナ禍の活動自粛とフレイル


 人と会わず、外にも出ず、家でじっと過ごす。こんな毎日を続ければ、誰でも心身の機能が衰え、健康を害してしまいます。コロナ禍の3年間は、生活上のさまざまな活動「自粛」の影響で、多くの人がその危険にさらされました。特に高齢期において、人との交流や活動の機会が減ると、筋力や認知機能、意欲が低下してしまい、どんどんフレイル(虚弱状態)が進行して要介護状態に移行しやすくなります。フレイルは、健康と要介護の中間的な段階であり、しっかりと対策をとれば要介護への移行を遅らせること(予防)もできます。その対策の基本は家に閉じこもらず、人や社会との関りを保ちながら、適度に「動く」「食べる」「話す」ことを心掛けて、心身機能の維持につながるような日常生活を送ることにあります。ただ、コロナ禍では「ステイホーム」「黙食」「ソーシャルディスタンス」といった3密を回避する自粛生活で、フレイル対策とはまったく逆行した不活発な生活様式が強いら

れました。


コロナフレイルに気を付けて


 自粛生活が長期化すればフレイルの進行は加速します。このような状態は「コロナフレイル」と呼ばれ、問題視されました。例えば、コロナ禍の前と比べて表にある項目に一つでも該当するとコロナフレイルに陥っている恐れがあります。アフターコロナに転換したとは言え、まだ長期化したコロナ禍の影響下にありますので、コロナフレイルへの注意と対策はこれからも必要だと思います。


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コロナ禍の前と比べて、


□意図せず、体重が2㎏以上減った(筋肉量減少)

□何をするにも面倒で、疲れやすくなった(全身的な体力低下)

□外出や運動の機会が減り、人と交流しなくなった(身体活動量・社会的交流の低下)

□ペットボトルのふたが開けにくくなった(握力低下)

□食事中にむせやすくなった(口腔機能低下)

□青信号で横断歩道を渡り切れなくなった(歩行能力低下)

□1週間誰とも話をしていない(口腔機能・認知機能低下リスク)


※改訂日本版フレイル基準(J︲CHS基準)を一部改変して作成


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 特に、外出や交流などの社会参加が減少したことで人や地域との関りが少なくなり、社会的な孤立が進行して、つながりを介したさまざまな恩恵(サポートやサービスなど)が受けにくく、健康リスクが高まっている高齢者が増えているかもしれません。コロナ禍で生じた社会的交流の低下をこれからの活動再開でどれだけ回復させられるかは大きな課題だと言えます。

 近年の研究では、社会参加(社会的交流や趣味活動)を高齢者に促すと社会的サポートが実際に増加することが立証されています¹。コロナ禍で失われた社会参加や社会サポートを復帰させるためにも、休止していた活動の再開や、新たな通いの場・居場所づくりなどにも力を入れたいところです。


つながりが少ない人は、身体活動が回復しにくい


 新型コロナの5類移行をきっかけに、高齢者の外出や交流機会が増加しているのを実感しています。実際に、地域の高齢者サロンなどから弊所への出前講座の依頼も増えてきました。ただ、私たちが普段接している高齢者の多くは、コロナ禍でサロン等への参加が一時的に途絶えていた方々です。元々の外出や交流の機会が少ない高齢者が現在どのような社会的交流の状態にあるのかはよくわかっていません。その一つの目安として、コロナ禍での緊急事態宣言前後の高齢者の身体活動の状況を、元々の社会的交流の状態を踏まえて調査した研究を見てみます(図)※2。この研究によると、社会的交流が元々少ない高齢者はそうでない方と比べて身体活動量が少ないことがわかります。さらに、独居で社会的交流が少ない高齢者は、元々の身体活動量が少ないだけでなく、高齢者全体(水色点線)の変化と比べ、その低下率が大きくなっていました。一方、独居でも社会的交流がある高齢者(黄色実線)は緊急事態宣言の後で身体活動の回復傾向が見て取れます。このように、日常生活の中で人とのつながりが少ない高齢者は、元々の生活が不活発なうえ、コロナ禍のような日常を大きく変化させる事態(災害を含む)の影響を大きく受けてしまい、身体活動をより低下させる生活状態に陥るようです。これらの結果は、高齢者の身体活動は社会的なつながりに十分配慮する必要があることを示唆すると同時に、社会的なつながりが元々少ない高齢者への対応がより重要であることも示唆しています。(続く)


図 コロナ禍で社会的交流が少ない高齢者は活動量がより低下



(参考)

1.izuka G, et al. Does social participation foster social support among the older population in Japan? A three-year follow-up study from

the Japan gerontological evaluation study. SSM Popul Health. 2023 Jun; 22: 101410.

2.Yamada M, et al. The Influence of the COVID-19 Pandemic on Physical Activity and New Incidence of Frailty among Initially Non-Frail

Older Adults in Japan: A Follow-Up Online Survey. J Nutr Health Aging. 2021;25(6):751-756.

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