top of page

【連載】しまねの国保連載第56回 ​つながりと身体活動編「なぜ「つながり」で健康に?」

 みなさんこんにちは。雲南市の北湯口です。

 この4月からスマホの健康系アプリを活用したダイエットに挑んでいます。年々、健診結果が怪しくなっていたところに、身近な方からの強い勧めもあって決心(大げさ)しました。目標は3か月間で3㎏の減量です。身体活動も増やしつつ、食事・間食・飲酒の習慣をそこそこ見直しました。成果は上々で、2か月経過した6月中旬には2㎏減量できました。次号で目標達成の報告ができるよう、ビールとアイスの誘惑に負けずに今夏を乗り切りたいと思います。

 さて、今回は、社会的な「つながり」がどうして私たちの健康や寿命に影響するのかについて紹介していきます。それではよろしくお願いいたします!


なぜ「つながり」で健康に?


 社会的な「つながり」の豊かさは、私たちの健康状態や生活の質、ひいては寿命にまで、良い影響をもたらすことが明らかにされています。反対に言えば、社会から孤立し、人とのつながりが弱くなることは、健康に悪影響を及ぼします。具体的な疾病では、3大死因とも言われる悪性新生物・心疾患・脳血管疾患についても、社会とのつながりが影響することがわかっています。疾病予防と言えば、健康的な生活習慣を送り(1次予防)、病気の早期発見を心掛け(2次予防)、病気にかかってもそれ以上悪化したり生活の質が低下したりしないように医療等の専門サービスを利用しながら健康の維持管理に努める(3次予防)のが一般的です。つながりと健康の関係性が注目されるようになった昨今では、適度なつながりを保つことも疾病予防に欠かせない要素だとして、わが国の健康政策においてもその重要性が強調されるようになり、広く社会全体でも認識されはじめています。

 ただ、そもそもなぜ社会とのつながりが、人々の健康や寿命に良くも悪くも影響を与えてしまうのでしょうか?それには、大きく分けると次の二つのメカニズムの可能性が考えられています。


孤立ストレスと社会的サポート


 一つには、孤立感を味わうことで脳が苦痛(ストレス)を感じ、それにより免疫機能が低下して病気にかかりやすくなる、という生理学的なメカニズムです。ストレスから心身の健康を害してしまうという流れは、想像もしやすく比較的わかりやすいと思います。

 もう一つには、社会的なつながりがある(または、ない)と、人からの影響や健康に関わる社会的サポートを受けやすくなる(または、受けにくくなる)ことがあげられます。先ほどあげた疾病予防の1次から3次予防の各段階についても、社会的サポートがあるかないかで、健康行動に取り組んだり、さまざまな専門サービスにアクセスしたりする可能性が大きく変わってしまいます。


孤立ストレスと社会的サポート


 例えば、人からの影響としては、健康に関連する行動(身体活動・運動習慣、検診、禁煙)や、肥満にもその影響が及ぶとされています。「知人に誘われて一緒にウオーキングをはじめた」「家族に勧められて検診を受診した」など、健康に関連する行動が身近な人の影響を受けるというのは、経験的に誰もが理解しやすいでしょう。肥満については、家族や友人が肥満になると、身近にいる肥満でない人まで肥満になる確率が高まると言われています。食べすぎる行動を無自覚に真似したり、肥満に対する抵抗感がなくなったりすることが原因とされています。身近な人につられて食べてしまうことに、共感できる人は多いのではないでしょうか。

 社会的サポートについては、社会的なつながりがあることでさまざまなサポートに触れる機会が増え、そこから恩恵を受けやすくなるという流れが考えられます。具体的には、困ったとき・つらいとき・情報が必要なときに助けてもらいやすく、社会との関り(社会参加)も促されやすく、社会資源(医療、保健、福祉など)にもつながりやすくなるなど、自分に必要な恩恵を多面的に受けやすくなります。日頃から社会とのつながりが適度に保たれていると、さまざまな社会的サポートが受けやすくなり、その結果として健康も保ちやすくなる、ということです。


コロナ禍と「つながり」


 コロナ禍は人のつながりを大きく変化させました。特に感染拡大の初期には、家から出ることすら制限され、社会生活上のあらゆる活動と交流も自粛せざるをえませんでした。これまで伝えてきたことを踏まえれば、このコロナ禍で社会とのつながりが大きく損なわれたことによる心身の健康への影響は計り知れません。ウィズ/アフターコロナに移行しつつあるなか、ようやく活動や交流が回復してきましたが、これまで約3年にわたってさまざまな社会活動を制限・自粛してきたことの影響は、これから顕在化してくる可能性があります。そのなかには当然、身体活動に関する影響も含まれます。

 コロナ禍の緊急事態宣言による外出制限で、子どもから大人まであらゆる人々の身体活動が実にわかりやすく低下したことが多くの研究から報告されています。また、外出制限の解除によって、多くの人たちは身体活動が回復しましたが、そのなかで実はほとんど身体活動が回復しない人たちがいました。それは、日頃から社会とのつながりが希薄で、孤立しがちな方々でした。(続く)


(参考)

1.村山洋史.「つながり」から読み解く人と世界(朝日講座「知の調和―世界をみつめる 未来を創る」2019年度講義)・第6回つながりと健康格差.https://ocw.utokyo.ac.jp/lecture_1818/(UTokyo OCW;東京大学の講義資料を無償で公開するWebサイト)

bottom of page