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【連載】しまねの国保連載第46回 子どもの身体活動編「0歳からはじまる、運動発達」

 みなさんこんにちは。雲南市の北湯口です。

  10月上旬の異常高温から一転して下旬は気温が大幅に低下しました。昨年も触れましたが、今年もまだあまりカメムシが出てきません。これも昨今続く異常気象の影響なのでしょうか?調べると、温暖化はカメムシの生存に一定程度は有利に働くそうですが、気温が高すぎると発育が阻害されるなどして生存に不利になる可能性があるそうです※1。駆除の手間が減るのはうれしいですが、他の昆虫や動物にも影響しているなら話は変わってきます。気候変動で生物多様性の保全が危ぶまれているようなら、それは深刻な事態と受け止めねばなりません。クマやイノシシなども人里にかなり近づいています。新興感染症が拡大し、災害も続いています。自然からの警告なのでしょうか。苦手なカメムシの減少に喜んでいる場合ではないかもしれません。

 さて、健康面では急な温度変化は身体にストレスとなり自律神経が乱れる原因となります。実際この変化に身体がついていかないとの声も聞かれます。新型コロナが落ち着きを見せていますが(執筆時10月末)、第6波の襲来も予断を許さない状況です。免疫力を低下させないためにも、いつも以上にバランスのよい食事や適度な運動を心がけ、気分良く過ごして自律神経を整え、健康的に過ごしたいものです。

 さて、今号では、子どもの運動発達について考えたいと思います。よろしくお願いします!


最も古い、遊んだ記憶は?


 幼少期に遊んだ記憶で、最も古いものは何ですか? 私は、幼稚園の頃に父と鉄棒で遊んだ記憶です。なぜか鉄棒に顔を強打してしまい、病院に運ばれたこととセットで覚えているので、楽しさより痛さや驚きが脳裏に刻まれたのでしょう。他の記憶もたどってみましたが、遊んでばかりいたはずなのに何をしていたかほとんど思い出せませんでした。一つ思い出せたのが、赤ん坊の頃、寝転がった父の腹の上ではしゃいでいる写真です。当時の記憶はないですが、自身が遊ぶ姿で最も古い「記録」だと思います。

 私事はさておき、誰もが幼少期にはたくさん遊んだ(遊んでもらった)ことでしょう。子どもは、生まれて間もなくからの、まわりの大人や周囲の人との触れ合いやさまざまな遊びの体験を基に、段階的な運動発達を遂げていきます。幼少期に遊んだ経験は、頭の記憶としては残らなくても、神経回路に刻まれて身体の記憶として残り、日々の運動を支え続けています。


0歳からはじまる、運動発達


 子どもの運動発達について少し説明します※2、3。まず、生まれたばかりの赤ん坊には、思い通りに体を動かす「随意運動」と呼ばれるものがありません。その代わり、思い(意識)とは無関係に、何か刺激が加わると無意識に動いてしまう「反射」という現象が見られます。例えば、手のひらにものが触れてぎゅっと握りしめる(把握反射)、口のまわりを刺激するとその方向に顔を向け口を開く(探索反射)、両脇を抱えて足の裏を床につけた状態で前傾させると歩くように足を交互に動かす(自動歩行)などがあります。生まれて間もなくから1歳くらいまでは「反射的な運動の段階」と言われ、実際にはそれぞれの反射が影響し合いながら身体のバランスを保つよう働いています。このような反射が生後間もなくから出現したり消失したりを繰り返しながら、だんだんと思い通りに体を動かすように発達していきます。この時期は随意運動のための準備段階です。


運動発達には段階がある


 1歳から2歳くらいまでは「初歩的な運動の段階」と言われています。この段階では、新生児や乳児期に見られた反射は消失して、身体を動かそうという思い(意思)に基づいた運動が現れてきます。安定して歩いたり、モノを握ったり離したりするなどの操作的な運動を習得していく段階です。

 それからは、だんだんとさまざまな運動を身につけていくようになっていきます。6歳から7歳くらいまでで、走る・跳ぶ・投げるといった基礎的な運動パターンを習得する「基礎的な運動の段階」を経て、7歳くらいからは、スポーツや日常生活で行われる多様で専門的な動きへと運動が発展していく「専門的な運動の段階」に到達していきます。

 子どもの運動発達には年齢に応じた変化の段階があります。おおよその年齢を示しましたが、最も大切なことは運動発達の土台づくりが生まれて間もなくからはじまっているということです。


雲南市の幼児期運動プログラム


 雲南市では、乳幼児期を「生涯に渡って運動に親しむための基礎づくりの重要な時期」と捉え、 0歳児からの心身の発達支援のための運動遊びプログラムを策定しています※4、5。

 このプログラムは、「0歳児からの運動へのいざない」「発達の特性に応じた運動遊びの提供」「豊富な自然環境の活用」の三つをポイントに構成しています。例えば、乳児期

では、まわりの大人の温かい眼差しと愛情豊かな関わりのなかで安心して遊ぶことができるよう、触れ合いを通じた遊びを重視しています。1歳から2歳くらいまでは、歩くことで広がるさまざまな興味関心や「やりたい」思いを支えながら、人との関わり合いを促せるような遊びを支援します。プログラムと言っても、何か特定の運動をさせるのではなく、人や自然との関わり合いを大切にしながら、子どもの心身の発達にあわせて「遊びたい」という意欲を引き出しつつ、いろいろな運動に楽しむ力を育めるように遊びの基本的な考え方や工夫を示したものとなっています。

 興味がある方は、インターネットで「雲南市幼児期運動プログラム」と検索すると雲南市ホームペ ージから閲覧・ダウンロードできますのでぜひご覧ください。また、当研究所ホームページでも図1のような子どもの運動遊び資料を提供していますので、気軽にご利用ください。


三つ子の運動百まで?


人や自然との豊かな触れ合いを通じた幼少期の遊び経験は、子どもの運動発達によい影響を与えるだけでなく、ひいては将来の健康にもつながっていきます。これは「三つ子の魂百まで」ということわざに通じるものがありますね。(続く)


図 1 「ふれあい遊び実例集(身体教育医学研究所うんなん,2020)」より抜粋


(参考)

1.藤崎憲治.ミナミアオカメムシの高温障害.植物防疫 64(7).2010

2.高石昌弘他.からだの発達─身体発達学へのアプローチ─.大修館書店.1989

3.杉原隆他.幼児期における運動発達と運動遊びの指導.ミネルヴァ書房.2016

4.雲南市教育委員会他.雲南市幼児期運動プログラム〈理論編〉.2014

5.雲南市教育委員会他.雲南市幼児期運動プログラム〈実践編〉.2016


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