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【連載】しまねの国保連載第41回 今こそ身体活動編「子どもの体力は大丈夫!?」

 みなさんこんにちは。雲南市の北湯口です。今年の冬、降雪量は平年並みか多いとの予報。本稿執筆中(12月中旬)に市内はもう積雪がありました。「カメムシが多い年は大雪」とか「カマキリが高いところに卵を産み付けると大雪」という農村の言い伝えをご存じの方も多い(?)と思います。この時期に地域サロンなどで高齢者に接していると、しばしばこの話題が登場します。先人の知恵がつまった言葉なのでいつも気に留めているのですが、そういえば今年の秋はカメムシがほとんど出てきませんでした。これほど出ない年は島根に来て以来経験がなく、毎日捕獲する煩わしさがないのはいいのですが、もうそこそこな積雪があったので逆の意味で少し心配です。どなたか逆パターンの言い伝えをご存じないですか? とにかく、あまり大雪にならないことを祈るばかりです。

 さて、今回は「子どもの体力」についてお話しします。“子どもは大人のミニチュアじ ゃない”という小児科領域の格言があります。子どもには子ども特有の体力の成長があるのですが、コロナ禍はその成長にどのような影響を及ぼすのでしょうか…。この機会に、皆さんと一緒に考えたいと思います。よろしくお願いします!


子どもの体力は大丈夫!?


 一般に、体力(運動能力)は 20歳頃にピークを迎え、加齢とともに少しずつ低下していきます。不活発な生活が重なれば、当然そのスピードは加速します。私たち大人の場合、仕事やプライベートが多忙になり運動不足の状態が長く続いたとしても、身体活動・運動に取り組みさえすれば、それなりに体力を取り戻したり、以前よりも高めたりすることができます。ただ、子どもの場合は、話がかなり変わってきます。


一生に一度の成長期


 子どもは、年齢によって「伸びる運動能力」が異なります。多少の個人差はありますが、男子の場合、動作の習得力(身のこなし)は8-10歳頃、持久力(動作の持続性)は12-14歳頃、筋力・パワー(力強さ)は14-16歳頃に、成長のピークを迎えます(女子は1、2年時期が早まる)。

 持久力と筋力・パワーについては、より成長(発達)しやすいのがその時期という意味で、そこで完成ではなく、その後も運動やトレーニングにより高めていくことができます。

 一方、動作の習得力は、生まれてから10歳頃まで著しい速度で成長するも、そこでほとんど完成してしまい、大人になってからは高めることが難しくなります。そのため、子どもの場合、この時期にさまざまな動きや遊びを経験することがとても重要になってきます。多くのスポーツ分野ではこの時期の年代を「ゴールデン・エイジ」と呼び、選手としての基礎固めをする最も大事な時期と位置付けています。


子どもの運動不足もコロナ禍で加速!?


 近年は、大人だけでなく子どもの運動不足や体力低下が問題視されています。実際、子どもの身体活動は30年前の半分以下(1万歩減)になり※1、走ったり投げたりする体力も低下※2しています。外出控えが進み、さまざまな運動行事が軒並み中止になるコロナ禍の中、運動不足や体力低下のさらなる加速がより懸念されるのが子どもたちなのです。

 これは中国・上海からの報告※3ですが、学校に通う子どもたちの身体活動と座っている時間とを新型コロナの拡大前後で調べたところ、体力の維持増進に必要とされる中高強度レベルの身体活動の時間は、拡大後に1週間あたり400分以上(1日約 60分!)も低下し、テレビやパソコンを見ている等の座っている時間は1週間あたり 1730分(1日約250分!)も増加していたそうです。皆さんの身近にいる子どもたちの様子はどうでしょうか?


とはいえ、どうすれば…


 大人は体力(運動能力全般)をある程度まで取り戻せますが、一生に一度きりしかない体力(特に動作の習得力)の成長時期が存在する子どもはそうはいきません。コロナ禍による不活発な生活の広がりが、この時期にしかない子どもの成長の機会を奪っている可能性があることについて強く認識する時期に差し掛かっていると思います。

 とはいえ、冬季は特に感染リスクが高く、ソーシャル(またはフィジカル)・ディスタンスという言葉が広まる中です。子どもたちが友達と一緒になって遊んだり運動したりするのを強く勧めることに抵抗と心配を感じている方は多いと思います。


生活活動も含めて、毎日最低 60 分以上!


 「子どもの身体活動ガイドライン(日本スポーツ協会)」では、からだを使った遊びや日常の中にある生活活動、体育・スポーツを含めて、毎日、最低60分以上、からだを動かすことを推奨しています。遊んだり運動したりすることはもちろん大切ですが、普段の暮らしの中で行っている生活上のさまざまな活動も立派な身体活動です。そうじなど家のお手伝いをしたり、犬の散歩をしたりと、身体活動のチャンスは意外といろんなところにたくさんあります。最近では、床の雑巾がけがうまくできなかったり(腕で体を支えられない)、水拭き用の雑巾をうまく絞れなかったり(力が弱くて水が絞り出せない)するなど※4、からだを上手に使いこなせない子どもが増えているそうです。

 からだは、使わないと使えなくなっていきます。特に子どもはその影響を顕著に受け、それが将来の身のこなしにもつながっていきます。小学校までの子どもが身近にいらっし ゃる読者の皆さん、まずは雑巾絞りからでも一緒にチャレンジしてみませんか?


(参考)

1.日本体育協会監修.アクティブ・チャイルド 60min.-子どもの身体活動ガイドライン-.2010.

2.文部科学省.子どもの体力向上のための総合的な方策について(答申).2002. URL: https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/021001.htm

3.Xiang et al. Impact of COVID-19 pandemic on children and adolescents' lifestyle behavior larger than expected. Prog Cardiovasc Dis. 2020;63(4):531-532. 4. 全国ストップザロコモ協議会 HP.子どものロコモについて.

URL:https://sloc.or.jp/?page_id=165


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