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【連載】しまねの国保連載第53回 ​働き盛り世代の身体活動編「座り過ぎ対策の振り返り」

 みなさんこんにちは。雲南市の北湯口です。コロナ再拡大や寒波襲来で、何かと心配な年末年始だった方も多いのではないでしょうか。コロナ禍をはじめ、ウクライナ侵攻や景気の低迷など、不安な社会情勢下ではありますが、元気よく飛び跳ねる兎(うさぎ)のごとく、閉塞感や暗い気持ちを跳ね飛ばし、活気を取り戻す、今年はそんな一年であってほしいものです。

 まだまだ積雪が心配な時期が続きます。嫌というほど除雪作業をされた方もいると思いますが、スコップでのややきつめの雪かき作業の運動強度はエアロビックダンス(有酸素運動を主体とするダンス運動)を上回るので、実は立派な健康体力づくりの全身運動になっています。とはいえ、寒さの中での急な運動となると、心臓や血管、足腰に急激な負担がかかり、健康効果より危険が上回ってしまいます。決して無理をせず、休み休み作業をし、雪かき後の体のケア(軽めのストレッチング)もぜひ忘れずに行うようにしてください。

 さて、今回は、体の動かし過ぎや使い過ぎによる健康影響について紹介します。それではよろしくお願いいたします!


座りすぎ対策の振り返り


 前回は事務系労働者(デスクワーカー)の座り過ぎの問題を中心に、それによる健康への影響や誰でも簡単に実施できる対策を紹介しました。この冬、寒波やコロナ禍のために、仕事やプライベートに関わらず座位時間が増えた、という人も多いと思います。繰り返しになりますが、座っている時間の長さは、心臓や脳、筋肉や関節にダメージを与える長さと同じで、生活習慣病や筋骨格系疾患の発症リスクとなります。そもそも寒さによる刺激は過度な血管の収縮を来しやすく、ただでさえ心血管疾患の発症リスクが高まりやすい時期でもあります。

 この冬はより一層、仕事中の座り過ぎを防ぐことの重要性が高まっていると言えそうです。ぜひとも事務系職場や家庭での「30分に一度は(座位を中断し)、立つ」の実践を、ご一緒に徹底しましょう(自戒を込めて)。


体の使い過ぎ、過った使い方「過活動」にも注意


 前述のように、身体活動と健康の話題となると運動不足や生活不活発といった「不活動」の側面が取り上げられがちです。ただ、体の動かし過ぎや使い過ぎといった「過活動(活動が多過ぎることだけでなく、過った体の使い方も含む)」による健康への影響も決して見逃せません。

 その一例となる職業性疾病(仕事の影響と考えられる病気)として、「腰痛」があります。厚生労働省の統計によると、休業4日以上の職業性疾病の6割を「腰痛」が占めるとされています※1。腰痛はさまざまな要因(個人・動作・環境・心理社会的要因)※2が複合的に関与して発生したり悪化したりすることが知られています。なかでも腰部に直接負担がかかる動作要因が腰痛に与える影響は大きく、具体的には、①重量物取り扱い作業、②立ち作業(長時間立ったまま、作業台が体格に合わないなど)、③座り作業(不自然な姿勢での作業、硬い座面に長時間座るなど)、④福祉・医療分野等における介護・看護作業(ベッド 車いすの移乗介助など)、⑤車両運転等の作業(建設機械の操作・運転による激しい振動、トラック・バス・タクシーなどの長時間運転)の5つが、腰痛が発生しやすい動作要因として挙げられています※3。


腰痛が多い職種とその対策


 業種の中でも、特に介護・看護に関わる「医療保健業」や「社会福祉施設」は腰痛を訴える人が多いことで知られており、立ち作業や商品陳列を繰り返す「小売業」、長時間運転や荷受・荷積作業の多い「道路貨物運送業」も、腰痛発生の多い職場とされています※2。いずれの職種も、業務特有の作業や姿勢の反復が腰部への過度な負担となり、腰痛が起こりやすくなる原因となります。対策上は当然その負担を減らすことが優先されますが、業務として避けられない面もあることから、単に量を減らすだけでなく、管理体制の見直しや予防教育とその実践を徹底するなど、より具体的で実効性のある対策が必要になってきます。

 最も重要なポイントは、職場(腰痛が起きにくい労働環境づくり、予防教育・指導の実践)と職員(日々の健康管理)が一体となって取り組むことに尽きますが、その予防対策として最も手軽に実践できる有効な対策の一つに「腰痛予防体操」があります※1-3。

 体操を含む運動の実践は、慢性腰痛に有用な方法として腰痛診療ガイドライン※4でも推奨されている方法です。その種類としては「ストレッチング」や「筋力トレーニング」を取り入れることが大切です。それらを効果的に組み合わせた医師監修による健康体操が厚生労働省サイトで動画にて紹介(下図参照)されていますので、実際に腰痛が気になっている職員や職場全体で取りくんでみたいという管理者の方々は、ぜひご覧になって実践してみてください。


日頃の「姿勢」にも気を付けて


 運動以外にも、普段から気を付けられることがあります。それは「姿勢」です。多くの腰痛には不良姿勢が関連していることから、仕事だけでなく日常生活から〝猫背・前かがみ〟といった腰部に負担のかかりやすい姿勢や動作には注意しましょう。猫背の常習化は、背中の筋肉が常に緊張して血流不足にもなるため、痛みの発生や悪化にもつながってしまいます。

 何より、痛みは体の不調のサインですから、無理をせず、まずは専門の医療機関を受診しましょう。(続く)



(参考)

1.厚生労働省.腰痛予防対策   

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_31158.html 2.厚生労働省中央労働災害防止協会.医療保健業の労働災害防止(看護従事者の腰痛予防対策).2014年  https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000092615.pdf

3.厚生労働省.職場における腰痛予防対策指針及び解説。 https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000034et4-att/2r98520000034mtc_1.pdf 4.日本整形外科学会・日本腰痛学会監修.腰痛診療ガイドライン2019(改訂第2版).2019.南江堂

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