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【連載】しまねの国保連載第50回 ​働き盛り世代の身体活動編「育児の動作で、体を痛めている」

 みなさんこんにちは。雲南市の北湯口です。

 先日、県外の往来が緩和されたのを受け、約2年半ぶりに長野県東御(とうみ)市にある連携機関の「公益財団法人 身体教育医学研究所」に行ってきました。最寄り駅に降り立ってすぐ、馴染みのお店が軒並み閉店していることに少し気落ちしてしまいましたが、現地メンバーとの久しぶりの再会交流でそんな気分も吹き飛んでしまいました。リモート方式のよさは分かりましたが、人と人とが直接出会ってコミュニケーションをとる対面交流が改めて素晴らしいものであることを再認識させられました。コロナ禍の副産物とも言えるかもしれませんね。1日も早く、制限なく対面交流ができる日が戻ることを祈るばかりです。

 さて、今月は、子育て中のお母さんが実は困っている体の痛みの実態とケアについてご紹介します。おかげさまで連載50回となりました m(__)mもう少し、お付き合いお願いします!


子育て中のお母さん、体が悲鳴を上げていませんか?


 働き盛り世代の重要な役割の一つに、子育てが挙げられます。特に、乳幼児を持つ母親が果たす役割の大きさは言うまでもなく、多大なストレスや負担から、心身の健康を保つことに精いっぱいの日々を過ごしているケースが少なくありません。父親の育児参加に対する社会の関心は高まりつつありますが、男性の育児休業取得率はいまだ7.5%(厚生労働省「令和元年度雇用均等基本調査」)にとどまり、母親が育児や多くの家事までこなさなければならない現状をすぐには変えにくいのが現実です。子育て中の母親のストレスや負担(育児をしながらの職場復帰で、職場ストレスまで重なるケースも)の軽減は、働き盛り世代の主要な社会的課題とも言えます。子育て中の母親の健康に関しては、産後不安や育児ストレスなどの心の健康面に対する関心が高く、多くの研究報告もあり、実際の対応として乳幼児健診の場でも相談などの支援がなされています。一方で、体の痛みや凝り、疲れといった母親の体(特に運動器)の健康の問題はあまり着目されていません。


育児の動作で、体を痛めている


 妊娠・出産・育児により女性の体は急激に変化し、さまざまな不快症状が現れます。なかでも、腰痛や肩こり、手首の痛みといった身体症状には多くの母親が悩まされているようです。産後女性の疼痛の実態を調査した研究※1によると、最も多い痛みが腰(7割)で、次いで肩(6割)、首(4割)、手首(3割)となっています。腰痛は、産後の骨盤の歪みや慣れない無理な育児姿勢(おむつ替えなどの腰を屈める姿勢、抱き上げ動作など)による腰への負担で引き起こされることが知られています。その他の痛みについても、育児に関わる動作の影響が大きいようです。実際に、先ほどの研究を見ると、痛みの出る動作として、抱っこ(7割が痛みが出たと回答。以下、同様)、抱っこ紐の使用(4割)、授乳、立ち上がり(3割)、おむつ替え(2割)などの育児に必要な動作で、多くの母親が痛みを感じていました。


痛みのガマンは悪循環のはじまり


 体の痛みは、「我慢すればなんとかなる」と軽視されがちです。しかし、その痛みを放置

することで慢性化したり、それが原因となって不安やストレスが増加してさらに痛みを強く感じやすくなったりするなど、悪循環に陥ってしまうことがあります。だからと言って、育児に必要な動作を避けることはできませんので、体の痛みがでないような工夫が大切になってきます。その一つに、体のセルフケアが挙げられます。「重労働」とも言える育児や家事で毎日酷使している体が、それ以上の悲鳴を上げないように、自分自身の体をケアしたりメンテナンスしたりする時間を少しでも確保しましょう。痛みや凝りの対処として最もおすすめなのは、ストレッチングです。1日5分だけでも時間を確保して、自身の体と向き合ってみましょう(図)。


子どもの健やかな成長は、親の健康から


 父親の育児参加は、母親の育児負担感を下げ、幸福度を上げるそうです。さらには、子どもの健康や発達(ケガや肥満の予防)にも良い影響を及ぼす可能性まで指摘されています※2。父親が育児参加しやすい社会づくりはもちろん大事ですが、父母ともに自分の体や健康のことを省みる心の余裕と時間をもてるような家庭づくりが、まずは大切なのかもしれません。子どもの健やかな成長に、親の健康は欠かせないものですから。(続く)


図 身体教育医学研究所うんなん制作『子育て応援ストレッチリーフレットより』


(参考文献)

1.永見倫子.産後女性の身体症状─育児中の女性に対するアンケート調査より─.日本保健科学学会誌.2019;22(1):16-21.

2.加藤承彦ほか.父親の育児参加が母親,子ども,父親自身に与える影響に関する文献レビュー.日本公衆衛生雑誌.2022(早期公開)

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