しまねの国保連載「健康にだんだん―あなたもきっとできる!身体活動のコツー」第51回​働き盛り世代の身体活動 編

 みなさんこんにちは。雲南市の北湯口です。
 今夏も全国各地が豪雨災害に見舞われました。幸い、島根県内は大きな被害がありませんでしたが、いつどこで起きても不思議でないほどの災害の頻発と、いまだ収束を見せない新型コロナの勢いに、不安な日々を過ごした方も多かったと思います。現在の日本は、災害多発、複合災害の時代に突入したと言っても過言ではなく、防災・減災を前提とした暮らしが当然になっています。私でもだいぶ日ごろの備えに敏感になり、つい先日は自家用車に緊急脱出ハンマーを備え付けました(昨年7月の災害対応で恐怖を感じたため)。実家からも緊急電源確保用ソーラーパネルが送られてきました。島根に来て17年、災害用品が届く日が来るとは想像できませんでした。いずれも出番がないことを願うばかりです。
 さて、今回は前号に続いて、育児に奮闘する母親の体のケアについてお話をしたいと思います。それではよろしくお願いします!

育児動作での負担を減らすには?

 前号(7月号)では、乳幼児を持つ母親の多くが悩まされている体の痛みや凝りの実態とその対処法(ストレッチング)をお伝えしました。ストレッチングは体の痛みや凝りの対処として確かに有効ですが、それ以前に、体の痛みや凝りが出ないよう体にかかる負担そのものを軽減する観点を持つことも大切です。そこで今回は、もう一つの対処法「ボディメカニクス」を紹介したいと思います。

看護・介護の基礎技術を育児に応用

 ボディメカニクスは、腰痛や肩こり経験者が多い看護や介護の現場で活用されている「体の使い方」の技術で、人間の身体構造の特性(ボディ)に力学(メカニクス)を応用する技術です。この技術を習得することで身体介助の際に体にかかる負担を軽減することができ、特に腰痛予防に役立つとされています。腰への負担が大きい看護・介護分野で多用される技術ですが、どなたにでも応用可能です。

 当然、育児動作にも応用できる技術なのですが、表立っては活用なされてこなかったような印象です(調べる限り、具体例の記述は見当たりませんでした)。この問題への関心が高まり、育児に携わる方々にもボディメカニクスを具体的に学べる機会が増えることを願います。

重心を低く、重心を近づける

 それでは、ボディメカニクスの技術を応用した育児動作の改善ポイントを紹介します。ここでは腰への負担が特に大きい「抱き上げ動作」を例にします(図)。ボディメカニクスには複数の技術(原理・原則)がありますが、ここで特に考慮したいポイントは「重心を低く保つ」「児と体(重心)を近づける」の2点です。具体的には、できるだけ腰を屈めず(使わず)、相手から体を離さず、脚の力を使って持ち上げることが重要です。これは、対象が人でも物でも変わらず、持ち上げるときには常に心掛けたいポイントです。悪い例・良い例を見ても、その違いは一目瞭然だと思います。

しまねの国保_抱き上げ動作の注意点.jpg

減らせないからこそ、〝質〟を改善する

 育児中(かどうかに関わらず)に腰痛を経験したことのある方は、悪い例にあるような動作を繰り返していた可能性が高いと思います。ちなみに、立って前かがみで荷物を持ち上げる姿勢(図-悪い例の写真左から2番目)は、直立姿勢時の2.2倍以上もの負担が腰にかかると言われています※1。仮に、1日の抱き上げ動作が計10回(授乳などで優に10回は超えると思いますが)あるとして、1カ月で300回、1年だと3600回(そこに下ろす動作も加えると2倍の7200回)にもなります。その分だけ腰に負担がかかると考えれば、いかに動作の質を改善するのが大事なのかお分かりいただけると思います。

周囲の理解とサポートを

 動作の質を改善することもですが、はじめから腰に負担がかからないような環境づくりも大切です。とはいえ、育児中はやるべきことが多すぎて、そんなところまでなかなか気を回せないのが本音だと想像します。それだけに、この問題への対処の成否は、育児をしている本人ではなく、周囲の気づきやサポートにかかっていると言えるかもしれません。(続く)

(参考文献)

1.Nachemson A : The lumbar spain.an orthopaedic challenge. SPAIN 1:59-71,1976

2022年09月14

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