しまねの国保連載「健康にだんだん―あなたもきっとできる!身体活動のコツー」第42回

​今こそ身体活動編

 みなさんこんにちは。雲南市の北湯口です。

 この冬は各地が大雪に見舞われました。積雪予報は出ていたので“ゲリラ豪雪”とまでは言わないでしょうが、それにしても一度に降る量が多い気がします。4年前のドカ雪で自宅に帰れなくなったときの教訓で、つい最近まで寝袋やら食料やらを自家用車に積んで通勤していました。また、2月初旬には福島県沖を震源とする大地震が発生しました。10年前の記憶が一瞬でよみがえり、故郷岩手を案じましたが、幸いにも甚大な被害には至らず安堵しました。

 次々と起こる災害には心が痛みます。自然の前にはひたすら無力と実感するばかりです。ただ、そんなときでも、自然と共に生きていく力というのは無限に発揮できるのだということを、災害のたび立ち上がってきた人々の姿から学び、勇気をもらっています。新型コロナウイルスとの戦いは長期化しており、予断を許しません。それでも、禍が転じて福となる日を信じて、日々の感染予防に努めたいと思います。

 さて、今年度のテーマ「今こそ身体活動」の最終回です。この1年を振り返ってまとめたいと思います。よろしくお願いします!

いつでもどこでもリモート会議

 コロナ禍は、今も私たちの生活習慣に大きな影響を及ぼしています。非対面・非接触型のコミュニケーションツールやサービスの充実に代表されるように、ITやAIなどのデジタル技術がこの1年だけでも急速に発展・普及しました。私自身、遠方の方とのリモート会議はこれまで年に数えるほどしかありませんでしたが、最近では、最低でも週1回はリモート会議をするようになりました。移動時間のロスがなく、どこからでも参加できるので大変便利です。ただ、移動( ≒身体活動)しながらあれこれ考えるのが好きな方なので、それができなくなったことと、空いた時間にどんどん会議が入ってくることに少々窮屈さを感じ始めています。いずれにしても、屋内にいながら済んでしまう用事が増え、外出の必要性とその機会はコロナ禍の前に比べれば激減しました。

対策結果としての身体活動の減少

 日本では、海外の都市封鎖のような厳しい措置はありませんでしたが、緊急事態宣言下では多くの人が3密対策を徹底していました。メディアでも、日ごろにぎわいのある都市部や観光地の閑散とする様子がたびたび報じられていましたが、感染者数が日々減少していく結果からも、外出制限の効果が出ていることは明らかでした。この間の世界各国からの身体活動(歩数)の減少に関する調査報告は、人々が感染予防のために社会的距離をしっかり保っていたことを表すものだったと言えます。

ますます心配、二次的な影響

 一方で、強く懸念されたのが、不活発な生活が続くことによる二次的な健康問題(不安・ストレス、体力低下、体重増加など)です。

 例えば子どもでは、屋内や狭い空間での生活が長引けば、日光を浴びないことによるビタミンD(骨や筋肉の形成に不可欠)の欠乏、精神衛生上の問題、そしてテレビや動画視聴などのスクリーンタイムの増加による近視のリスクなどが高まります※1。実際、学校を対象にした調査では、学校再開後に、体力が落ちた、体調不良が多い、肥満傾向が増えた等、さまざまな健康問題が報告されています※2。

 現在、世界各国で二次的な影響に関する研究が進められています。健康に対する中期的な影響を分析するにはそれなりの時間が必要ですが、とにかく深刻な影響が生じていないことを祈るしかありません。

島根の身体活動状況は?

 益田市の20─74歳の健康な地域住民を対象に2018年10月から実施されてきた縦断的研究のデータから、コロナ禍の身体活動に関する調査結果が報告されていました※3。それによれば、WHOのパンデミック宣言(2020/3/12)から日本政府の宣言解除(2020/5/25)までの歩数の変化を評価したところ、各宣言の直後に300歩から1000歩程度の減少が見られたようですが、いずれも1週間ほどで回復し、宣言が解除されるまで歩数の顕著な減少は見られなかったそうです。ただ、これは調査期間中に新型コロナの感染報告がなかったことが一因と考えられていて、その後の発生状況によっては、島根県に在住する方々の身体活動もそれなりに影響を受けたのではないかと、私自身の行動や周辺の方々の生活の変化から推察しています。

不活発な生活様式が定着しないように…

 この1年でこまめな手洗いやうがいが習慣化した人も多いと思います。マスクや3密対策をしながらの生活にもだいぶ慣れてきました。そして、いつのまにか不活発な生活様式にも…。

 感染対策はもちろん重要です。しかし、不活発な暮らしが長期化し、このまま定着してしまえば、心身へのさらなる悪影響(二次被害)は避けられません。

 コロナ禍の前でさえ、私たち人類は不活動のパンデミック(まん延)状態にあると言われていました※4。これ以上、身体活動と健康の関係をより悪化させないよう、コロナ禍の今こそ、誰もが活動的な生活を送れる社会のイメージを描くタイミングのような気がします。身体活動が奪われない暮らしをデザインすることへの期待と、具体的な議論が広がっていくことを切望します。

コロナ禍の執筆を振り返って

 この1年間、読者の皆さんにコロナ禍を前向きに乗り切る身体活動のコツを伝えることを目的にお話を進めてきました。未曽有の事態で、先々もなかなか見通せず、日々刻々と状況が変わっていく中、何をどのように伝えていけば、地域住民や読者の皆さんにとって安全で効果的な身体活動の情報発信になるんだろうかと、今年度は特に悩みました。でも、あれこれ最新の情報を収集したり考えたりしながらの執筆は、雲南での活動にも直結することでしたので、私自身にとっての貴重な勉強の機会にもなりました。

 今回までにお届けした内容は、

第1回:感染も二次被害も防ぐための身体活動

第2回:体力は、取り戻すのに時間がかかる

第3回:活動量が回復しにくい、交流の少ない高齢者

第4回:ストレスに負けない心と身体の強さが体力

第5回:成長期の不活発、特に要注意

第6回:コロナ禍の身体活動と執筆を振り返って

でした。これらの内容が、皆さんの身体活動を少しでも後押しする情報発信になっていたのでしたら幸いです。これからも、コロナに屈しない、島根・雲南ならではの身体活動のコツを発信していきたいと思います。1年間、ありがとうございました。

(今こそ身体活動編おわり)

(参考)

1. Guan, H., et al. (2020). "Promoting healthy movement behaviours among children during the COVID-19 pandemic."

Lancet Child Adolesc Health 4(6): 416-418.

2. 公益財団法人運動器の健康・日本協会.学校における子どもの運動器の健康に関わる問題に対しての提言(2021/2/15).

URL: https://www.bjd-jp.org/archives/news/1397

3. Hisamatsu, T., et al. (2021). "Effect of coronavirus disease 2019 pandemic on physical activity in a rural area of Japan: The Masuda Study." J Epidemiol.

4.  Hallal, P. C., et al. (2012). "Global physical activity levels: surveillance progress, pitfalls, and prospects." Lancet 380(9838): 247-257.

2021年03月25日

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身体教育医学研究所うんなん

Physical  Education  and  Medicine  Research  Center  UNNAN