しまねの国保連載「健康にだんだん―あなたもきっとできる!身体活動のコツー」第39回

​今こそ身体活動編

 みなさんこんにちは。雲南市の北湯口です。

 このたび熊本県南部、そして島根県西部で発生した豪雨災害に被災された皆さまに心よりのお見舞いと一日も早い復興をお祈り申し上げます。

 昨今、「数十年に一度の…」という災害報道があまり珍しくなくなったように感じます(局地的にはまれなことではありますが)。異常気象が異常ではなく、もはや日常から備えるべき事象になっています。気象庁は、21世紀末(2076~2095年)には猛暑・短時間強雨・無降水の年間発生日数が全国でさらに増加するとの予測結果を発表しています※1。このまま進めば、今より深刻で、誰も経験したことのない予測不能な影響があちこちで発生する可能性もあるそうです。温暖化や気候変動の影響に備えながらも、それらを緩和する対策(エコライフ、技術進歩、社会経済システムの転換など)がますます求められています※2。新たな日常を模索中の今は、地球環境との向き合い方(エコライフ)にも目を向けてみるよい機会かもしれません。

 さて、今回はコロナ禍で人々の身体活動が実際どのように変化しているのか、最新レポートをもとにその状況を紹介します。よろしくお願いします!

外出や移動規制・自粛の影響はどれほど?

 世界保健機関(WHO)から新型コロナウイルス感染症の世界的な大流行(パンデミック)が宣言されたのが3月11日。日本政府も4月7日に7都府県に緊急事態宣言を発出、4月16日には島根県を含む全47都道府県に対象地域が拡大されました。関連するニュースが毎日飛び交うなか、未知のウイルス拡大に戦々恐々でしたが、「不要不急の外出自粛」「3密回避」などの対策徹底に努めつつ、戸惑いながらも平常を保とうと模索しながら過ごしていたように思います。一方、海外に目を向けると、イタリアやアメリカなど日本の外出自粛よりさらに厳しい対策(都市封鎖)をとった国もあり、対象国民の不安は想像に難くありません。

 3月以降、世界中で外出や移動が規制・自粛される事態となりましたが、この期間中に人々の身体活動にはどれくらいの影響が生じていたのでしょうか?

世界的な歩数の変化の研究

 6月末、パンデミック宣言前後の歩数に関する世界的な変化を調べた研究の結果が公表されました※3。この研究では、187か国、約45万人から、スマホアプリで計測された2020年1月19日から6月1日までの歩数データが集められ、日本人は約4000人が調査対象となりました。スマホユーザーにデータが偏っている点には考慮する必要がありますが、コロナ禍による身体活動の世界的な影響を客観的かつ時系列的に記述したとても貴重な研究です。

パンデミック宣言後、世界で歩数が急激に減少

 世界全体の傾向としては、WHOのパンデミック宣言から10日以内に約5%(約300歩/日)、30日以内に約30%(約1500歩/日)歩数が減少しており、計測期間中に世界的に急速な歩数の減少が認められたという結果でした。この変化には国ごとに違いが見られ、特に、都市封鎖(ロックダウン)が行われたイタリアでは約50%(約3000歩/日)の最大減少を見せたのに対し、厳しい対応策を講じなかったスウェーデンではほとんど歩数に変化が見られなかったそうです。「社会的距離」に対する措置の厳しさとその順守具合が見て取れるような結果となっていました。

緊急事態宣言を受け、日本人の歩数も減少

 では、日本はというと、パンデミック宣言より少し前の2月下旬あたりから徐々に減り始め、3月末から急激な減少を見せ、4月中旬までに約3000歩/日減少した後、その状態が5月末まで続いていました。調査対象の半数が東京在住者のため、少し都市部に偏った結果と言えそうですが、島根在住の皆さんの印象はいかがでしょうか?私個人は、外出をかなり控えたので、身体活動がだいぶ減ったと思い込んでいましたが、自身のアプリで歩数を振り返ると緊急事態宣言前よりもむしろ宣言中は増えていました。その頃、体力(免疫)が低下しないよう昼休みに毎日散歩していたのを思い出しましたが、最近(8月)は暑さを理由にさぼり気味でした。コロナと暑さで身体活動不足が続けば、当然ながら肥満や生活習慣病のリスクが高まります。心を入れ替え、マスクによる熱中症にも気を付けながら、身体活動を回復させたいと思います(次回報告予定)。

高齢者は活動量が回復するものの…

 もう一つ、こちらも都市部が中心ですが、東京、神奈川、千葉、埼玉、愛知、大阪、兵庫、福岡在住の高齢者1600名を対象にインターネット調査を行った研究の結果が公開されています※4、5。この調査では、2020年1月(感染拡大前)、4月(拡大中)、6月(第1波収束後)の身体活動の変化を見ています。結果では、1月と比較して拡大中の4月には身体活動量が約3割(1週間に約60分)減少していましたが、6月には元の状態にまで回復していました。ただ、一人暮らしをしていたり、近隣や人との交流が少ない高齢者の場合は、十分に身体活動量が回復していなかったそうです。

小さな思いやりが身体活動のきっかけに

 〝つながり〟の少ない高齢者ほど、身体活動が減少したままの状態に陥っている可能性があります。高齢者の場合、身体活動が減少すると身体機能が低下し、転倒・骨折の危険性をより高めるなど、要介護状態に至りやすくなります。このような状態を長引かせることはできるだけ避けなければなりません。感染予防のために外出を控えることは重要ですが、それと同じくらい、健康を保つための身体活動の維持も重要です。このバランスを適正に保つことの大切さを皆さんからもぜひ身近な高齢者の方々に伝えていただけると幸いです。ただでさえコロナ禍で社会的交流が減少している状況です。こんなときだからこそ、ちょっとしたあいさつ、声掛け、電話、お便り、メールだけで、いつも以上に人とのつながりを感じられ、それが身体活動のきっかけにもなるかもしれません。(続く)

(参考)

1. 気象庁.地球温暖化予測情報第9巻.2017.URL:https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/GWP/Vol9/pdf/all.pdf

2. 環境省地球環境局.おしえて!地球温暖化.2019.URL: https://www.env.go.jp/earth/earth/ondanka/oshiete201903.pdf

3. Tison GH, et al. Worldwide Effect of COVID-19 on Physical Activity: A Descriptive Study. Ann Intern Med. 2020.

4. Yamada M, et al. Effect of the COVID-19 Epidemic on Physical Activity in Community-Dwelling Older Adults in Japan:A Cross-Sectional Online Survey. J Nutr Health Aging. 2020 Jun 23 : 1–3.

5. 荒井秀典,山田実.感染予防と身体活動 第2報:活動量は回復したのか?.2020.

URL: https://yamadatsukubalabor.wixsite.com/tsukuba/blank-1

2020年11月04日

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