しまねの国保連載「健康にだんだん―あなたもきっとできる!身体活動のコツー」第38回

​今こそ身体活動編

 みなさんこんにちは。雲南市の北湯口です。新型コロナウイルス感染症が猛威をふるい、多方面に甚大な影響を及ぼしています。影響を受けられました皆さまに心よりお見舞い申し上げますとともに、感染拡大の防止にご尽力されている多くの皆さまに深謝いたします。

 マスクのせいか、はたまたストレスのせいか、緊急事態宣言下は何となく息苦しい日が続いた気がします。宣言解除により日常が戻りつつありますが、第2、3波の襲来が予断を許さない状況です。「コロナ禍前の日常」と「新しい生活様式」との折り合いをどうつけるか。“アフターコロナ”“withコロナ”への関心が日々高まっています。各所で試行錯誤されていると思いますが、身体活動も例外ではありません。コロナと共存しつつ、不活動におちいる人をいかに減らすか。仕事のハードルが大きく上がった気もしますが、「新しい身体活動様式」を生み出す大チャンスかもしれません。なるべく前向きでいたいものです。

 さて、今回は、外出自粛による体力低下のリスクについて紹介します。よろしくお願いします!

宇宙船と体力トレーニング

 宇宙から帰還したばかりの宇宙飛行士の姿をイメージできますか?

 地上スタッフに両脇を抱えられてフラフラの状態で降りてくる。そんなイメージがあると思います。無重力の宇宙船内では、姿勢を保ったり日常のように動いたりすることがないため体力が大きく低下します。

 2週間ほどの宇宙船滞在でも約15%、1日あたり約1%もの筋肉が萎縮してしまうとの報告があります。そのため宇宙船内であっても筋肉量を維持する体力トレーニングが欠かせません。

とても真似できません…

 実際、宇宙飛行士は船内での体力トレーニングを毎日2時間半も行うことが義務付けられており、さまざまな実験等ミッションをこなす上に日々過酷なトレーニングを続け、体力の維持に努めなければならないようです。こうした宇宙船滞在が3~6か月もの長期にわたって続くそうですが、住み慣れた地球上ですらとても真似できる気がしません。

 こうした体力トレーニングで筋力や持久力を維持しているのに、帰還してすぐには、歩くことはおろか立つことさえも難しくなります。なぜでしょうか?これは、無重力の宇宙船内で、日常動作に必要となるバランス感覚や柔軟性、協調性(動きの連動がスムーズか)などの能力を発揮することがなく、低下してしまったことが原因とされています。無重力ではそうした能力を発揮する必要がなく、身体がいろいろ忘れてしまうということですね。帰還後には、それらを回復するためのおよそ2か月のリハビリが待っているそうです。まるでプロのアスリートですね。

外出自粛と体力

 コロナ禍の外出自粛による体力低下については、今まさに実感している人もいると思います。当然、外出自粛による不活動は体力低下を引き起こします。

 一般に、人は20歳をピークに徐々に体力が低下し、50歳を超える頃から加速して毎年1~2%低下すると言われています。加齢に不活発な生活が重なることで、体力低下はさらに加速します。宇宙船での筋委縮は1日およそ1%でしたが、無重力でなくともベッドに寝たきりの生活を送ると、1日0・5%ほど筋肉がしぼんでしまうとされています。特に、重力に対抗して姿勢を維持したり働いたりする筋肉が衰えやすく、部位としては下肢筋(太ももやふくらはぎ)が著しく低下します。不活動の影響は、こうした抗重力筋に表れやすいのです。逆に言えば、日頃から抗重力筋に刺激を与えておくことで、不活動による体力低下の影響を小さくすることも可能です。簡単なところでは、「立つ」「歩く」などが抗重力筋をよく使う日常の基本動作です。

減るのは簡単、取り戻すのは困難

 自粛中ずっと寝たきりだった人はほとんどいないと思いますが、普段より不活発な生活を送っていた人は体力が低下している可能性があります。2週間の不活動の影響を取り戻すのに3倍以上時間がかかるという報告もあり、一度失った体力はなかなか元に戻せません。とはいえ、コロナ禍前の体力をできるだけ取り戻し、さらなる健康二次被害(前号参照)を防ぐためには、適度な身体活動に取り組むほかありません。ただ、自分が思っている以上に体力が低下していて思わぬケガや故障につながることがありますので、運動・スポーツやトレーニングに取り組む際には、低い負荷からはじめて徐々にからだを慣らすようにしましょう。

身をもって実感

 私事ですが、6月中旬に親知らず3本(上2本、下1本)を抜歯するため1日入院しました。術後は約1日ベッドで安静にし、翌日問題なく退院しました。痛みも少なく安堵していましたが、退院後は何とも言えないだるさと疲れやすさが1週間以上続きました。若いほど(42歳ですが)筋委縮の影響が大きいらしく、安静の影響がそれなりに出たのかなと、身をもって不活動の影響回復に時間がかかることを実感した次第です。(続く)

(参考)

・福永哲夫.宇宙におけるヒトの骨格筋変化.バイオメカニズム学会誌.25(1).2001.

・川上泰雄ほか.短期間の寝たきり生活は青年の筋特性にどのような変化を引き起こすか.デサントスポーツ科学第21巻.113-121頁.公益財団法人石本記念デサントスポーツ科学振興財団発行

・JAXA宇宙航空研究開発機構.宇宙での生活に関するQ&A国際宇宙ステーション(ISS)ではどのようにして健康を保つのですか.

URL:https://iss.jaxa.jp/iss_faq/life/life_015.html

2020年09月17日

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