しまねの国保連載「健康にだんだん―あなたもきっとできる!身体活動のコツー」第43回
​今こそ身体活動編

子どもの身体活動 編

 みなさんこんにちは。雲南市の北湯口です。

 平成26年度のスタートからおかげさまで8年目を迎えました。本連載では、身体活動(=生活活動+運動)の概念を正しくお伝えするとともに、読者の皆さんの活動的なライフスタイルを後押しする確かな情報発信を目的としています。身体活動のコツをしっかり掴んでいただけるよう、やさしくわかりやすくお伝えすることを心がけたいと思います。

 さて、今年度のテーマは“子どもの身体活動”です。すでに“大人” である読者の皆さんにはあまり関係のないことのように思えるかもしれません。でも、子どもが元気よく身体を動かし健やかに育つことと、私たち“大人”が健康的に暮らしていくこととは、決して無関係ではありません。ある意味で、一蓮托生です。子ども(昔の自分)の身体活動を知ることが、皆さん自身の身体活動を考える機会にもなる(役立つ)ということを、今回のテーマを通じてお伝えしていければと思っています。

 この1年間もお付き合いをお願いします!

昔の遊びと言えば?

 子どもの頃(小学生くらい)の遊びと言えば、読者の皆さんは何を思い浮かべますか?

 職場で聞くと、年代や性別、地域に関わらず、〝外遊び〟をほとんどの同僚が挙げました。野山や川で遊んだり、神社や車の通りが少ない道路に集まっては、近所の同年の友達や少し年上のお兄さんお姉さんと日が暮れるまで遊んだりしていたようです。「陣取り」「かくれんぼ」「色鬼(鬼ごっこ)」「けいどろ(どろけい)」「天下」と聞けば、懐かしく思い出す方が本誌の読者には多いのではないでしょうか。私(43歳)も、幼少期には県外(岩手)にいましたが、雨でも降らない限りほとんど毎日、外で同じように遊んで過ごしていました。当時は、家庭用ゲーム機器が普及し始めた頃でしたが、今のように誰もが持っているわけではなく、子どもの遊びと言えば、まだまだ外遊びが主流の時代でした。

サンマが足りない!?

 私が子どもの頃には、今に比べればそれなりに遊べる時間や場所(空間)がたくさんあり、何より一緒に遊べる友達(仲間)が多くいました。ところが、子どもたちを取り囲む社会の環境は、この数十年で大きく変化しました。習い事の低年齢化(早期教育)に伴う多忙化による遊ぶ時間の減少。都市化や自動車の普及等による安全な遊び場の減少。そして、少子化による一緒に遊ぶ友達の減少です。

 現代の子どもは、思いっきり外遊びをしようにも、そのために欠かせない時間・空間・仲間が、私たちの幼少期と比べて大きく不足しています。3つの間が足りないことから〝サンマ(3間)不足〟とも呼ばれており、現代の子どもの身体活動が減少する理由に挙げられています※1。

科学技術の功罪

 この他、子どもの身体活動に大きな影響を及ぼしているのが、科学技術の発展です。確かに、私たちの暮らしは日進月歩の科学技術のおかげで日々便利で豊かになっていきます。その一方で、これまで普通に存在していたさまざまな身体活動の機会が少しずつ(時に大きく)失われていることは忘れがちです。

 そう遠くない将来、水道の水がすべて自動水栓センサーで出るようになったとします。そのとき私たちは、水道のハンドル(またはレバー)を握り、それを適度な力加減とタイミングで回し、自分に必要なだけの水量を目や耳で確認しつつ微調整して出すという、協調運動(身体活動)の体験に加え、その積み重ねで培われていくはずの基本的な動作能力を獲得する機会も喪失してしまいます…。

 大げさに聞こえるかもしれませんが、実際に、子どもの基本的な動作(身のこなし)には異変が生じてきています。2017年には、子どもの健康・体力に関する日本最高峰の専門家会議が「子どもの動きの健全な育成をめざして~基本的動作が危ない~」と題した提言をまとめ※2、すでに警鐘を鳴らしています。

 当然、子どもに限った話ではなく、大人も確実に影響を受けていきます。ただ、大人は、その問題に自ら気づいて(あるいは気づかされ)行動を変えることができますが、今の暮らしが当たり前の子どもにはなかなか難しいことです。

コロナ禍を好機に!

 では、いったいどうすればいいのでしょうか?

 それは、私たち大人が、子どもの身体活動の危機を正しく認識し、正しい知識を持って、粛々と対処していくことにほかなりません。子どもたちは、大人たちが築いてきた社会のなかで育っていきます。であれば、その築き方(または気づき方)次第で、子どもたちの未来も変えていけるはずです。至極当然のことを言っているに過ぎませんが、次世代を担う子どもの身体活動の未来を見据えた適切な築き(気づき)が、今の大人である私たちに求められています。今を変えるのは大人の役割であり、大人が変わればきっと子どもも変わる。子どもたちの健やかな育ちと成長は、これから確実に年老いていく今の大人たちの暮らしにもよい影響を与えてくれるに違いありません。

 いまだ衰えを見せない新型コロナウイルスの蔓延もまた、さらなる不活発化を加速させる要因となっています。世界全体がコロナ禍によるパラダイムシフトの渦中にあり、社会が大きく変わろうとしています。そんな今を、誰もが活動的になれる新しい生活様式を築いていくための好機にしてはと強く思います。

今年度の内容は…

 例年になく熱い書き出しになってしまいましたが、これからお伝えしていく内容をご覧になれば、きっと同じ気持ちになっていただけるのではと思っています。今後の内容としては、

 

 「子どもの身体活動の実際は?」

 「子どもの体力は本当に低下している?」

 「子どものスポーツ:遊び感覚の大切さ」

 「子どももロコモ!?」

 「部活動:休養日は何日必要?」

 

などを予定しています。

(参考)

1. 文部科学省中央審議会.子どもの体力向上のための総合的な方策について(答申)(平成14年9月30日).

URL:https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/021001.htm

2. 日本学術会議 健康・生活科学委員会 健康・スポーツ科学分科会.提言:子どもの動きの健全な育成をめざして

~基本的動作が危ない~(平成29年7月11日).URL: http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-23-t245-1.pdf

2021年06月17日